内分泌疾患とは、動物が健康に生きていくうえで必要なホルモンを作り出すシステムである内分泌器官に異常がおこり、ホルモンが多かったり少なかったりすることによって、体に様々な症状が出てくることを言います。
 
内分泌疾患の中でも比較的よく遭遇する病気は
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
甲状腺機能低下症
糖尿病
です。
 
 
<副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)>
副腎や脳下垂体(副腎にホルモンを出すように司令を出す組織)の腫瘍のために、副腎からホルモンが出すぎてしまいます。犬では比較的よく見られますが、猫ではあまり見られません。
 症状
 ・食欲が多い(多すぎる)
 ・お水を飲む量が多い
 ・おしっこの量が多い
 ・おしっこが薄い
 ・お腹がぽってりと張り出す
 ・息がはあはあと荒くなる
 ・毛が薄くなる
 
検査は?
この病気を診断するには血液検査で副腎から出るコルチゾールというホルモンの測定をします。また、副腎の超音波検査を行い、副腎が大きくなっていないか確認します。
 

 治療は? 
・上記症状の改善
・致死的になる合併症(糖尿病、膵炎、高血圧、血栓塞栓症、腎不全など)の予防  
を目的とし、動物達のQOLを良好に維持し生存期間を延長させます。

治療法には、内科療法、放射線療法、外科手術(下垂体切除術)がありますが、動物の状態や飼い主様のご希望に沿って治療法を選択しています。多くの方が選択される内科療法では、ホルモンの合成を抑制するお薬を服用していただき、多く出すぎているホルモンの量を少なくしていきます。しかし、ホルモン量が少なすぎても体に問題が生じるため、定期的に血中のホルモン濃度のチェックを行いお薬の量を調節していきます。

 

 

<甲状腺機能低下症>
甲状腺機能低下症は高齢の犬で多くみられる病気で、喉にある甲状腺という組織から甲状腺ホルモンが出なくなる病気です。猫ではあまり見られません。

 症状は?
・毛が薄くなる
・あまり動かなくなる(寝てばかり)
・悲しげな顔になる
・太ってくる
・皮膚病を繰り返す
・色素が沈着する
「年のせいかな?」と思われるような症状が多く、飼い主様が様子の変化を見過ごしているケースも多く見受けられます。健康診断で血液検査の数値が引っかかり判明することも多々あります。

 どのような検査をするの?
血液生化学検査で甲状腺疾患を疑わせる異常が認められた場合、甲状腺から出るホルモンの測定を行います。

 どのような治療をするの?
足りない甲状腺ホルモンのお薬を服用し補充します。そして、定期的に血中のホルモン濃度の測定を行い、血中のホルモン濃度が適正範囲内に維持されているか確認しながら、お薬の量を決定していきます。

 

お薬を飲み始めると、「お散歩に行きたがらなかった子が嬉しそうにお散歩に行きたがるようになった」、「寝てばかりだった子が昔のようにシャキシャキ元気になった」というような我が子の変化に飼い主様が驚かれます。

 



<糖尿病>
 
犬の場合
膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが出なくなることによって、血糖値が高くなってしまう病気です。中高齢(7歳〜9歳)の犬が主にかかります。肥満や食生活などの生活習慣とは関係なく発症します。
 
好発犬種は?
プードル、ダックスフント、シュナウザーなど様々な犬種に認められます。
 
症状は?
 ・水をよく飲む(急に増える子も多いです)
 ・おしっこ量が増える、回数が増える
 ・よく食べる
 ・痩せてくる
 ・おしっこが甘い匂いがする
 ・おしっこがベタつく
 ・目が白くなる
 などの症状が現れます。
 
どのような検査をするの?
血液検査で血糖値が高いことを確認します。同時に尿検査を行い尿中に糖が出ていることを確認します。また、その他の病気が併発していないか確認します。(血糖値のコントロールに影響を及ぼす病気もあります。)

どのような治療をするの?
血糖値が上がりにくい適切な食事療法とともに、毎日2回のインスリンの注射を行うことで、血糖値のコントロールを行います。併発している病気がある場合には、同時に治療を行ってあげることで、血糖値のコントロールが容易になる場合もあります。

 

 

 

猫の場合


膵臓から分泌されるインスリンと呼ばれるホルモンが、うまく働かなくなることによって血糖値が高くなってしまう病気です。中高齢の猫がかかることが多いです。肥満の猫やこれまでに膵炎を起こしたことのある子が、かかることの多い病気です。

症状は?
・水をよく飲む
・おしっこの量が多い
・よく食べるのに痩せる
・足腰がふらつく
・毛艶が悪くばさばさになる
などの症状が現れます。

→進行してくると、
・食欲低下
・下痢、嘔吐
・ぐったりしている
など、明らかに体調が悪そうになってきます。

どのような検査をするの?
犬の場合と同様に血液検査と尿検査を行います。また、高血糖状態が続くことにより

 治療は?
犬の場合と同様に、適切な食事療法と一日に2回のインスリン注射により血糖値のコントロールを行います。猫の場合、適切なインスリン治療を続けていくと、治療の必要がなくなることもあります。

糖尿病の治療では毎日の2回のインスリン注射が必要になり、お家で飼い主様に注射していただくことになります。病院で一緒に注射の打ち方を練習してから、お家で打つことにチャレンジしていただきますのでご安心ください。みなさん上手に打てるようになります。

 

毎日一緒に生活していると、少しずつ現れる変化には気づかないかもしれません。このようなホルモン疾患は中年(6〜7歳)以降に増えてきますので、そのくらいの年齢に差し掛かってきたら、年に1度は健康診断を受けてみると良いかもしれませんね。